残してくれたもの
懇意にして頂いていた宮大工が亡くなっていた。
はがきが知らせてくれた。
もう、30年以上のお付き合いだった。
その間に、木の話、木組みの話、細工の話等々、職人さんならではのお話を沢山聞けた。
その宮大工さんも、弟子入りをして数年は師匠から殆ど口も聴いて貰えなかったと言っていた。
「見様見まね」で数年たった時、「お前は仕事が出来そうだから、明日から〇〇という現場に行け」と言われたそうだ。
もちろん一人でその現場に行くと、沢山職人さんがいて戸惑ったが他人の仕事ぶりを見て、「これなら行ける」と踏んで、皆に混じったそうだ。
そういった見習い時代から棟梁になるまでの話は、ほんとに興味深かった。
こういった芯のある人がどんどん亡くなっていく。
こればかりは仕方が無い。
合気道を最初に知った砥嶋先生のお弟子さんでも有り、その砥嶋先生の紹介で知り合ったのだ。
稽古も少ししたが、その難しさを直ぐに読み取り、「若ければ入門させてもらったのに」とおっしゃっていた。
当時、砥嶋先生は、合気道熊野塾で教えており、植芝宗家が来られた時はカバン持ちをされていた。
木刀での稽古で、市販の木刀は直ぐに折れるので、砥嶋先生に木刀作りを任されていたそうだ。
その砥嶋先生の遺品になる木刀を、宮大工が貸して欲しいというので貸したら、一回り細い木刀を作って持って来てくれた。
その木刀が宮大工の遺品になってしまった。
大阪ワークショップは2月2,3,4日です。