列に並んだのは人生数回目だろう
妻が近所にあるケーキ屋のシュークリームが美味しそうだと発見。
その店は木曜日と金曜日しか営業していないそうだ。
今日は木曜日、「ほんならいってみるわ」とケーキ屋へ。
あっと驚いた。20人は並んでいるのだ。
「もしかしたら予約?」そう思って、並んでいる一人の女性にたずねた。
「この店は予約ですか」「さあ、知りません」一瞬、耳を疑って同時にフリーズした。
このおばはん、何も知らないのにここに並んでいるのか?
しかも、私を避けるようなそぶりをみせよる。
ほんと、ぶっさいくな奴はどこへ行ってもこれだ。
私は、列の先頭へいき店の中を覗き、客と店の人のやり取りを観察した。
予約ではなさそうだと判断し、列の最後尾にならんだ。
私は、こういった列に並んだのは、もしかしたら人生数回目だと思う。
メールを妻に打つ、携帯からの文字打ちは時間が掛かる。
すると、後ろに並んでいるおばはんが、「前、空きましたよ」と怒りを込めた声で吠えよった。
おっさんなら「何?」と反射するのだが、ここは「すみません」と謝りながら列を前に詰めた。
50㎝程詰める事に、どんな意味があるんや?
なんじゃ、このおばはん、次は怒鳴るで。
と決めてメールを続けた。
直ぐに妻から返信が来た。
「やめる?」と。
私は「いいや、並んでるわ」と返した。
このおばはんがうっとおしいから、一寸でも邪魔をしておこう、と思ったからだ。
「子供やんけ」と一人で笑いながら並んでいた。
すると、しばらくしてその後ろのおばはんは、何か慌ててその列を離れてどこかへ言った。
何か口走っていたような。
それから並んでいると、後ろにいた女性2人が「このお店は何が美味しいのですか?」と話しかけてきた。
「いや、私も初めてで、妻に言われて来ました。お二人は、どちらから来られたのですか?」「川崎です」「ええ~~川崎くんだりから!」「ハイ(笑い)」と和やかに話は続いた。
一寸した口の聞き方が、気持ちを和ますのか緊張させるのかだ。
一人で生きている人には分からないし、そんな事も頭にはないだろう。
一人で生きている人、というのは、文字通りの意味ではない。
何もかもを閉ざしている人の話だ。
どうだろう、日本人の7割くらいは、閉ざして生きているのだろうと思うが。
もちろん、無自覚に、だ。
そんな事も、この閉塞感の原因の一つだ。