19才バンドボーイからジャズドラムに挑戦、音楽は世界共通語と悟り音楽で世界を目指す。
スタジオやクラブ、ショービジネスの仕事をする傍ら、既成のジャズに疑問を持ち、京大西部講堂を中心にフリージャズの世界で活躍(故阿部薫・故吉沢元治、山下洋輔・坂田明をはじめ前衛的ジャズミュージシャン、詩人吉増剛造やアンダーグラウンド演劇、舞踏とジョイントや共演)の後、関係性を追及する為武道の世界へ。
フリージャズ。
私の出す音は、私のグループの出す音はフリージャズ。
究極の即興演奏を求めて、 1970 年頃にアルトサックスの T 、ベースの Y と、トリオから始まった。
集合即興演奏という形式の可能性を求めた。
AACM や JCOA といったアメリカのグループや、ヨーロッパの前衛音楽の旗手達の演奏を研究した。
私は、アーノルド・シェーンベルクの 12 音技法を用いた。
そんな中で、ジャズという代物が私自身とさほど密接ではない、ということに気付いていった。
探求の目は、「日本」に向きだした。
とはいっても暗中模索だったのだが。ドン・チェリーが来日した。
日野晃 La Fiesta 134 -祭り-
それを富樫雅彦がサポートした。
「この方向ではない」
ジャック・デ・ジョネットやロイ・ヘインズ、メル・ルイスが来日した。
「これらのドラミングではない」
阿部薫をはじめ、色々な前衛ミュージシャン達と舞台に立った。
「違うな」
ではどんな音なのだ?そんな葛藤が常にあった。
25年前にスティックを置いた
武道の道に専念していった日野は、ある時期を堺にドラムの演奏に区切りをつける。
しかし2008年、還暦のソロコンサートを開催する。「25 年前にスティックを置いた、そのおとしまえをつける、というのが、私の個人的なドラムを叩く意味だった」(日野晃)
「La Fiesta134」(ラ・フェスタ134)還暦ドラムソロコンサートライブ への練習が再開される。
久しぶりに練習台に向かいメトロノームと格闘した。
一つ打ち。肘から上方に上がり、肘から落とす。
スティックの先端に力が出るように、指も腕も解放させる。
武道での突きである。
武道での突きがスティックのコントロールを教えてくれ、スティックのコントロールが刀や棒という道具の使い方を教えてくれる。
もちろん、そこに最初から共通点があったのではない。
共通させる為に「力」という要素を持ち込んだのだ。
その要素を共通とした時、相互に関係性が生まれ、それが身体の動きとしても関係性を発生させたのだ。
ドラムの基本練習の一つ打ちは楽しい。
ドラムをやり始めた時は、文字通り「一つ打ち」しか出来ないしイメージが貧困なので、これほど面白くなく退屈な練習はなかった。
しかし、だんだんとドラミングを理解してくるにつれ、そして自分の求める音、単純には叩きたいことが増えるに連れ一つ打ちが面白くなっていった。
一つ打ちは、確かに一つのストロークで一つの音しか出さない。
しかし、それは 4 分音符であったり、 8 分音符、 2 分音符…、もしくは 3 連の中の 8 分、 4 連の中の 16 分と、いくらでもイメージが膨らむ。
そんな練習が好きになると同時に、ドラミングも成長して行ったものだ。今回は、それだけではなく「力」をスティック先端から出す、をテーマにしていたので、余計に一つ打ちに楽しく取り組めた。
日野晃 La Fiesta 134 -祭り-
25 年前にスティックを置いた。
日野晃 La Fiesta 134 -祭り-
その年、妻は私の最後のライブを聴いていた。
25 年前の音を知るのは妻だ。
そこから武道に道を変え猛進した。
それはもちろん平坦な道ではなかった。
山あり谷あり、それは私だから仕方の無い道なのだ。
私が選ぶのは、常に山側であり谷側だからだ。
その全ての私の時間を共に歩いて来た妻。
その妻に25年の感謝を込めて。
そのコンサートから10年後、2019年には和太鼓奏者で息子の日野一輝とのコンサートを開催。
日野晃”古希”ドラムソロ1時間ぶっ叩きコンサートReal'71 vs日野一輝
さらに2022年1月、再び日野一輝とのライブを開催。
日野晃さんは身体、音感、言語が思考と直感の双方で繋がっている人です。
それはジャイロモーメントの様にバランスを取りブレがない。日野晃さんの実践する武道に於いても『力』というものはエネルギーの量ではなく、洞察力と時間と相対的な間の関係性の質なのだと気づかされる。
そこに生まれる相互の反応によって無限で自在なものとして身体が感じて動く事の大切さを説く。
その事をどう自覚して扱うかが日々の暮らしへの意識としても大いに役立つ。日野晃さんは長い間、世界各地を巡り各国のダンスカンパニーや武道家へのワークショップを精力的に行なっている。
参加者は心が身体の可能性を既成概念と無自覚によって縛っていることに気づかされる。
何気ない日常の中でさえ日野晃さんと向き合いただそこに立っているだけで呼応するという意識が生まれる。そして笑顔とその物腰の柔らかさからは『力み』のない『力』こそ真の『人間力』なのだと静かな佇まいを通して私達の心にそっと触れるように伝えてくれるのだ。
ミナ ペルホネン 皆川 明
皆川さんとの出会いは、2005年に元フォーサイス・カンパニーのダンサー安藤洋子さんの紹介からだ。
その年、横浜BANK ARTで延べ2.000名を超すワークショップを行い、同時にショーケースもした。
その時に、オリジナルの衣装をデザイン製作して貰ったのがキッカケで、他のダンス作品やワークショップで協力して貰っていた。10年前、還暦のコンサートの時は、オリジナルスーツをデザイン製作してもらっている。
日野晃
ライブDVD
DVD「La Fiesta134」(ラ・フェスタ134)還暦ドラムソロコンサートライブ 3,300円
DVD「REAL'71」(リアル71)古稀ドラムソロコンサートライブ・記念クリアファイル付 5,500円
ライブCD
CD「狂い咲き」還暦ドラムソロコンサートライブ 2,200円
CD「ライナーノーツより」
フリージャズなんて難しくて……と思っている人にこそ、このアルバムを聴いてもらい、精神の汗を流す喜びを味わってもらいたい。
……このあからさまな日本的「間」と「気迫」の前に小賢しい言葉は不要である。
小説家 田中啓文