文句なく美しい
Amancio Gonzalez、フォーサイスカンパニーに指導に行き、特に親しくなった一人だ。
彼の深く純粋な感性に触れたのは、私のワークの目玉ともいうべき「正面向い合い」だった。
日本人に説明するのも難しいので、海外では無理だと思っていたワークだ。
それを見せた時、ダンサー全員が食い付いたのには驚いた。
人と人が向い合う、そこに生まれる目に見えないが周りに影響を与える何かに、全員が反応をし2005年以降、このワークは皆からのリクエストが一番だった。
皆がそれぞれと向い合い、何だかんだと話すのだが、私が手本として向き合うと、殆どのダンサーから感情が溢れた。
それを契機に、全員の向き合う姿勢が変わり、感情を溢れさせるペアが生まれた。
「もしかしたら、生まれて始めて『人』を見たのかもしれない」と言ったダンサーもいた。
このamancioも感情を溢れさせた一人だ。
私に十字を切ってハグをしてきたのを思い出す。
同僚でスペイン人のyoneさんは、私と向き合ったままピクリとも動かず、目から涙が滴り落ちていた。
その時間は相当長かったように思う。
この無言の時間は、私とyoneさんとの特別な時間だった。
「言葉は要らない」をお互いに本当に体感した時間だ。
日本では「武禅」という事で、この「人と向い合う」というセミナーを100回以上行っているが、こういった瞬間は皆無だ。
日本人は、何かしらの方法としか認識できないからだろうか。
人そのものが、ひとそのものと向き合う、という当たり前の事が出来なくなっているとしか思えない。
amancioは、常に全力だ。
若い頃はクラシックバレエのトップダンサーだった。
そこから独自のキャラを形成し、フォーサイスカンパニーでは異彩を放っていた。
「日野、トゥシューズは動きや姿勢を教えてくれるから良いぞ」と数年前話してくれた。
歳を経て、キャリアを経て、今、改めてクラシックバレエと向き合っている。文句なく美しい。