技術は、腰の曲がった婆ちゃんでも
大阪の稽古で面白い事があった。
たまたま、総合格闘技のジムを経営する方が見えていて、体験したいとのことだった。
あまり気にも留めずに稽古を進めた。
師範代のリクエストで、東京で稽古をしていた「円容拳」の中の「ハイロウ」をやった。
原理的には「肘の使い方の練習」の一つで、左右の肘を関連させて動かすものだ。
意外と難しく、肘以外の手先の運動線も制約があるからだ。
これは、初期の大阪道場の稽古ではほんとに1日数時間、毎日練習をした。
それほど、自分の癖との対峙は難しいし時間がかかるのだ。
そりゃそうだろう。
癖は30年生きていたら、30年かかって作り続けているのだからだ。
それを、その体験の総合の方も取り組んだ。
やはり、どうにもならない。
どれだけどうやっても、形にはならない。
「これも相当時間がかかる動き出し、肘を自分の身体で見つけ出すのも時間がかかりますよ」とアドバイスにもならない事を話して、生徒達の取り組みを見ていた。
師範代が付きっきりでやっているが、そもそも「肘を」という概念を持っていないので、身体が強張ってしまって動きどころのモノではなくなっていた。
「私の事はどこでお知りになったのですか?」「youtubeや色々な動画です」「こんな地味な稽古をしていると知っていましたか?見ている限り、細かい動きは苦手ようですね、きっと私達のやっている事はあなたには不向きだと思いますし、あなたのやっておられる事の役に立たないと思いますよ。適当に遊んで帰って下さい」「いえいえ、私は絶対に役に立つと思っているので、稽古をやらせてください」
とのやりとりだったので、続けて貰った。
稽古時間の終わりに近づいた時、日野武道研究所の名物婆ちゃん、御年84歳が、その男性に近づき一緒にやろうとしていた。
「ま、ええか」と思い、他のものの指導にかかっていた。
終わってから、その男性は「あの人のアドバイスが一番効きました。ほんとありがとうございました」
終わりかけに、婆さんが、その男性を転がしかかっていたのを目にした。
男性は目を白黒させて慌てていた。
そらそうだろう。
もちろん、これは稽古で「無駄な力はいらない」という実際を体感するのが目的の一つだ。
自分の身体を意識し、そこだけを動かす、というだけの約束だらけのものだ。
しかし、実際として、腰の曲がった80歳を超える婆さんに転がされかけたのはショックだったと思う。
色んな「技」の一つで投げられかけたのならまだしも、単純に腕を持った状態での体重移動でその状態になったのだから。
技術というのは、そういうものなのだ。
根性や気合いを省いた客観的な事だ。
もちろん、根性や気合い、気持ちが必要ないのではない。
絶対に必要な要素だ。
しかし、技術を身に付ける時は、それが邪魔をするので省いて稽古をするのだ。
来月の大阪の稽古は7月16日大阪道場
夏の大阪ワークショップ8月1.2.3日北区中崎町傍島ビル
