すれ違う言葉

「よく、こんな大きな道場を建てましたね」
道場に初めて来た人が、必ず口にする言葉だ。
そして次に「どれくらい掛かったのですか?」という。

もちろん、初めて目にしたら驚くだろう。
まさかど素人数人で建てたとは思わないからだ。

高さは12m50、床面積は丁度330㎡ある。

私にすれば「よし、建ててやる」があり建てたのだ。

建物は六角形だ。
「それはどんな意味を持っているのか?」とも質問される。

建て始めて、形が出来上がって来た頃、「ウッディ」という雑誌に掲載された。
それに伴って、見学者が増えた。

その見学者の一人が「夢があって良いですね」とおっしゃった。
「???夢、いやいや現実ですよ、私がチエンソーを使って建てているので」このやりとりも、始終あった。

もし、私がどこか知らない土地に行き、素人の方が私の道場のような建築物を建てていたとすると、こういった言葉は出て来ない。

例えば「基礎工事はどうされました?」「耐震的には、どんな工夫をされているのですか?」とか、「暖房は?水はどこから?」という事を聞くと思う。
建物の構造や造作を見れば、どれだけ工夫をしているか、どれだけ難しいかが分かる。
分かるから、その上での言葉だ。

例えば、「どれくらい掛かったのですか?」と聞いた場合、どれくらいの建物なら6ヶ月もあれば建つ、というような知識や、将来自分で建てようと思っていて、その下調べとしての質問。
あるいは、単純に好奇心で聞くかもしれない。

ただ、それらの場合の質問する人の表情は、キラキラと輝いている。
顔の輝きは、間違いなく好奇心が働いているからだ。

しかし、そういった人が「どれくらい掛かったのですか」と質問して来た事はない。
大方が、自分とは何の関係もないのに、口から飛び出した言葉だ。
だからこちらとしては「はあ?」となる。

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