巨人が一人旅立った
雑誌秘伝から、私の次の本が出る。
といっても、毎月書いているエッセイをまとめたものだ。
書き下ろしをここ3.4年の間に数冊頼まれているのだが、イマイチテーマにピンとこないので書いていない。
だから、エッセイをまとめよう、という事になったのだ。
殆ど毎月書いているので、180回になる。
もちろん、全部を本にする事は出来ないが、選り分けて250頁以上の本になる。
4月位の発売に向けて、もう動いているそうだ。
今日はその本の為の軽い打ち合わせだった。
その中で、昨日書いていた1968年辺りの話しに盛り上がった。
もちろん、編集の人間はその時代を知らない。
たった今知った、指揮者の小澤征爾さんがお亡くなりになった。
結局、一度もその指揮ぶりを体験出来なかった。
「23歳で単身、フランスに渡ると、現地で行われた指揮者のコンクールで優勝して飛躍の足がかりをつかみ、世界的な指揮者、カラヤンに師事した。」という話を15.6歳の時に知り、単身スクーターで行った事に驚いたものだ。
当時は、ベンチャーズやビートルズ少年だったから、まさかクラシック畑の小澤征爾さんに興味を持つなどとは夢にも思わなかった。
ジャズドラマーになり、なんだかスタンダードなジャズと私自身に関係が無い気がしていた。
それは、ジョン・コルトレーンの「マイフェバリット・シングス」に魂をこじ開けられたからだ。
そんなある日、何時もの様に居候していた友人の家で、友人が一枚のレコードを私に紹介してくれた。
それが「ノーベンバー・ステップス」だった。
「何!これ!」だ。
身体中が耳になった。
琵琶の音色、尺八の息がオーケストラを従えている、そんな感じがしたのだ。
まるで異質な世界が、融合せずにそこにあった。
その全てが、私の感性の隅々に行き渡った感じがした。
そんな衝撃が22歳の春にあったのだ。
この音楽構造が、私の創造性の基本的な構造になって、今でも息づいている。
小澤征爾さんのご冥福をお祈りします。