大人扱い

「大人扱い」や「子供扱い」という言い方がある。

14.5歳の中途半端な年齢の時、大人扱いされたら嬉しいものだった。
そこで失敗すると逆に「何ややっぱり子供かいな」と言われ悔しい思いをしたものだ。
そう言えば、そういった言葉を聞かなくなった様な気がする。

14歳の時、年齢を偽って、キャバレーのボーイをしていた。
丸刈りの頭を少し伸ばした程度だ。
頭は癖毛なので、伸びても目立たないから上手くいったのだ。

キャバレーのボーイは、まず掃除だ。
もちろん便所掃除からだ。
家ではそんな手伝いもしないのに、仕事となると一生懸命した。
そして、キャバレーは大人の香りと、少々危険な香りを併せ持っていたから毎日ワクワクして通ったものだ。

ホステスさん達は山程いた。
中学生の子供ではなく、大人の女性だ。
この業界は人の出入りが激しい。
だから、一寸真面目に長く働くと格上のガイドになれた。
しかし、どう見てもガキの私だが、他のボーイや厨房のチーフ達、ホステスさん達は、それこそ「大人扱い」してくれていた。

それは当時の日本の生活状況があったからだ。
だから、キャバレーの人達全員が「生活の為」だった。

ガイドになると、チップがあちこちから入って来た。
中学生の1ヶ月の小遣いが500円、新聞配達の朝夕刊配達で5.000円程だった頃に、1.000円のチップをお客さんや、ホステスさんから沢山貰えるのだ。
優に給料の倍以上にはなっていた。
それこそ、こんな美味しい話はない。

お客さんからは「いい子付けてや」とチップを貰い、まだ指名のないホステスさんには「お客さん付けたろか」とチップを貰ったものだ。
「大人扱い」を受けた楽しい思い出だ。

キャバレーを終え、市電の終電車で上六へ帰り、近所の寿司屋でお酒を飲んでお寿司をお婆ちゃんのお土産にしたものだ。

ワークショップは残り10名です。 

 

https://www.hino-workshop.com/

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