カーテンコールが止まらない

初日。
大成功といえるだろう。
クライマックスに近づくと圧倒的なパワーを「太鼓衆一気」が発する。
客席を見ていると、完全に放心状態になっていた。
カーテンコールが何度も何度も続き、フィンランドの人達が「マクベス・アゲイン」を堪能、あるいは、未知の体験として捉えてくれたことを物語っていた。
アフタートークでは、芸術学校の教授が案内役を務めてくれ、楽しく進行できた。
「日野は、自分のコンセプトがフィンランドの人達に理解されたと思いますか」と質問が客席から出た。
「例えば、私がパテシエだとしてケーキを作った。そのケーキを買う人達は、それぞれ思い思いにそのケーキを楽しむでしょう。私はケーキを作る、それで私は満足なのです。ただ、より良いケーキとは何か?を探求しているだけです」
こんなやり取りが約30分程続いた。
私の海外での演出初体験だ。
日本ではない国、ということでこころがけた事がある。
ツーと言えばカーは無い、という点だ。
もちろん、それは技術的な事も感覚的な事も含めてだ。
そうなってくると、曖昧な表現を避ける事に徹しなければならなかった。
曖昧な表現だからこそ、演者のレベルが計られたり創造性を発揮出来たりするのだ。
しかし、それを避けるとこちらの要求を伝える事になる。
そうなると、こちらの要求のレベルが高度過ぎて短時間ではその事を実現することが出来ない。
また、演者間のレベル差も問題になる。
そこをクリアする為に、「具体的にどんな舞台になるのか」という点に徹した。
どう倒れて、どう歩く、どう話して、どう捌ける等々だ。
つまり、そういった行為への要求は、演者の心理や台詞、役作りを妨げないということだ。
演者を最大限尊重しようと考えた結果だ。
フィンランドで著名な映画監督は、大変気に入ってくれたようだ。
「日野、もっと作品をフィンランドで作ってみたいか?」と申し出てくれた。
また、「どこからどこまでが台本で、どこが即興なのだ?」とも質問された。
いずれにしても、今回のプロジェクトは私にとって貴重な体験となった。
本当に多くの事を学ばせて貰った。
日本側のキャストとして、「太鼓衆一気」と高原伸子さんの存在は、何よりの助けだったのは間違いない。
高原さんのダンスに「今までの人生の中で、見た事のない美しさだった」と作品の中で重要な役割を担っていた女優が、高原さんを抱きしめて語っていた。
それくらい、高原さんの踊りはフィンランドの観客を魅了した。
私としては「当たり前や」なのだが。
圧倒的な本気は、国境を越えて人を感動させる、という私の持論は、やはり正解だった。
何一つ思うようにはいかない、という実際の中で、演者が輝いて観れるという作品が出来上がったのだから成功と呼ぶほかはない。
もう一つの重要な質問は「日野メソッドについてききたい」というものだ。
しかし、実際には私のメソッドはさほど活用していない。
というのは、本番まで2週間しかなかったからだ。
メソッドからということになると、1年以上かかってしまう。
もちろん、その方式にもチャレンジしてみたいとは思っている。
そういったメソッドの入ったワークショップを大阪と東京で開催します。
大阪ワーク・ショップは5月5.6.7.8日、東京ワーク・ショップは6月2.3.4.5日です
http://hinobudo.wixsite.com/workshop/

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