笑うしかない
アリビ一日目は、胸骨操作は相手に気付かれない動きを作り出す為のもの、ということで投げをした。
武道や武術は、相手との関係である。
であれば、その関係において、何を重要視しなければならないのか。
技の成長、人の成長は、全てここにある。
トゥールーズから、車を飛ばすこと40分程の小さな村。
村が世界遺産だ。
そんな小さな村から、車で走る事20分のところに体育館がある。
昨年も思った事だが、「こんなところに人が集まるのか?」今回も思う。
しかし、時間になると30人を超す人が受講してくれる。
昨年のマルセイユから受講してくれている、剣道6段の先生も顔もあった。
この先生はご夫婦で熱心に取り組んでくれる。
奥さんが「日本語を勉強して、もっと日野の話している事を知りたい」と嬉しい事を言ってくれる。
基本的にここでのワークは柔術系だ。
主催者が柔術と空手だからだ。
しかし、突きをやったところ、相当アレンジされた形になっていたので…「ま、ええか」だ。
熱心な若者が数人いる。
彼らはパリでも見る顔だ。
身長が180㎝くらいでガタイが良いので、相手をしてもらう。
理解不能のまま、私に投げられるので笑うしかないのだろう。
私に投げられると、決まって皆笑顔になる。
私の思い描く昔日の達人は、こんな現象を起こしていたのではないか、と追求しているからだ。
つまり、相手に違和感を抱かせない、感じ取らせない、という大前提を一番重要な要素とし、全ての接触を考えているからだ。
全ての接触とした時、それは身体に限らない、相互の距離に発生する空気感や雰囲気。
声、表情等々、全てだ。
投げから、投げられながらの変化。
皆そういった動きが好きだ。
瞬く間に2時間30分が過ぎ、「明日ね」だった。
午後10時に稽古を終え食事に。ピザやステーキを食べる人達を見て、それだけで満腹になってしまう。