咄嗟に

よく咄嗟の時に一回転して大怪我から免れた、という話を聞く。
私は昔、マンションの3階の階段から、地上まで落ちたことがあるが、脳震盪を起こして地上には顔から突っ込んだ、不細工な思い出があるだけだ。
大阪の道場に、時々通う最年長の女性、というよりも「おばはん」。
74歳になる。
決して熱心な生徒ではない。
1年来なかったり、月に1回の時も、気が向いたら毎週来ることもある。
その程度のお遊び生徒だ。
もちろん、熱心にやっているといっても週に1回だから、余程自習をしてなかったら、進歩などないが。
その女性からのメールが来た。
バスに乘り、運転席のタイヤの上の席に座っていた。
運転手が道路の事情で急ブレーキをかけた。
タイヤの上の席の女性は、車内に放り出され、料金箱で頭を打ったそうだ。
頭を打ったので、大事をとり救急車に乗せられ検査。
結果、脳には異常が見つからなかったので、ひとまず安心というところだ。
病院を出ると、バスの運転手さんが家まで送る為に待っていた。
「奥さんは、何かスポーツでもやっているのですか?」といきなりの質問。
この女性は、もう背中も曲がり気味で、決して何かをやっているようには見えない。
「熱心ではないですが、武道を少し」と答えると「なるほど、それで合点がいきました。私なら、あの姿勢から転げ落ちたら骨折してましたよ。しかし、奥さんは一回転して頭を打ったくらいで、骨折をしなかったのですよ」女性は、一回転したことを憶えていなかったそうだ。
「咄嗟に」身体が動いたのだ。
何れにしても怪我が無くて良かったという話だ。
女性は、前転も出来ないから、横転りをやったりしていたくらいだ。
私達の稽古を見ている内に刷り込まれたのだろう。
新年から、良い話を聞けた。

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