まさか、まさか!
「まさか」と思うのは、思う人の想像を超えていたり、想像の世界にも入れないようにことだ。
大阪教室は昨日稽古収めだった。
早めに切り上げ、文字通りの忘年会だ。
10年前の教室と比べ、1/3程の人数になっているので、予約しなくてもいいのではと師範代と笑った。
その大阪教室に、ここ数ヶ月通ってくれているガタイの良い男性がいる。
体格は良いが、その雰囲気が武度とは縁遠い感じだ。
不思議に思って仕事をきいた。
仕事はなんと「カツオの一本釣り」の漁師さんだった。
その漁師さんが、一本釣りは連動で体力を消耗せずに釣り上げられると話してくれた。
一本釣りは体力勝負で、年齢と共に若い者に負けるという。
現在40歳代半ばのその男性は、20歳代の漁師と勝負しても勝つそうだ。
「連動とねじれ、それに胸骨をうまく使えば、体力を消耗しませんよ。若い頃より力が増しています」のだそうだ。
「まさか」漁師さんが連動を使ってくれているとは!?
しかも、私のDVDを全巻買い、そこから研究していったという。
まさしく私の理想通りの使い方をしてくれている人が、漁師の世界にいたのだ。
「大大まさか!」だ。
今は、大海原に長距離を見る双眼鏡を使っての漁場探しに一生懸命だという。
しかし、欠点は集中力が数分で欠けて来るそうだ。
大方は、そこで睡魔に負ける。
その男性はそれが嫌でマストに頭突きをして見続けるという。
「それはそうやで、双眼鏡で見たらあかんで、目を開けておくだけでええんや、それの方が大海原の違和感を感知できるから」
「先生、漁師をしたこともないのに、なんで分かるんですか、その違和感を見つけるのが私の仕事なんですよ」
「武道」は武道の形式を無視し、要素だけが一人歩きしている。
もちろん、それは私が望んでいることなので、それが嬉しい。
その日も、ベルリンで活躍するダンサーが一時帰国し、教室で汗を流していった。