“アキラ”と付けたよ

朝、国外からの小さな小包が届いた。
少し前にブリュッセルでの稽古中、道場の隅で座り込んでいる女性がいた。
それとはなしに目に止めていたら、具合が悪く動けないようだった。
「大丈夫?」と声をかけると「大丈夫」だと答えた。
どう見ても大丈夫ではない。
皆の稽古具合との兼ね合いを計りながら、「どこが痛いの」女性は腰をさすった。
しばらくして、「どう?」と聞くと痛みが軽くなったようだった。
稽古が終わる頃には、笑顔が戻り「もう大丈夫です」と帰宅した。
それから半年か1年たった、ベルギーの別の街の稽古に彼女がいた。
稽古が終わると、赤ちゃんを抱いていた。
「あの時はありがとう、本当に助かった。で子供が生まれたのであなたの“アキラ”って名前を付けました」
「ええ〜〜〜、それはあかんやろ!」
即答したが、女性の隣で、ご主人も喜んでくれているようだった。
そのお母さんからの小包だ。
“アキラ”の洗礼式の引き菓子だった。
人はどこでどう関わるかは分からない。
まさか、自分の名前が民族を超えて、しかもこんな形で残るとは。

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