一本の棒から

一本の棒から力を出す。
こればかりは力任せではどうにもならない。
私の教室では、細い竹に水道管を保護したり、寒い地方では防寒対策として用いるカバーを付け、それを稽古用に用いている。
その利点は、中身が細い竹だから、力任せで相手を押さえたり突いたりした時、竹がしなってしまったり、悪くすると折れてしまう。
その事で、自分が力任せかそうでないかを、客観的に知ることが出来るからだ。
そのしなる竹で、相手を倒さなければならないのだから、一本の棒のマジックとでもいうべき使い方や、こちらの身体の使い方を修練していかなければ、何一つ出来ない。
その意味で道具を使うのは、稽古には相当良い。
本当に棒から力を出せるのか、棒の先端から力を出せるのか。
そういった本質的な稽古ができる。
もちろん、単純に棒を操る事も大事だ。
しかし、もっと大事なのはこの中身である。
以前、地方のワークショップの時、棒術をやっている方が参加してくれていた。
それは「本当にこの型で、相手は倒れるのか」という疑問が長年の稽古の中で湧いてきたからだという。
そこで急遽、道具から力を出す、というワークに切り替えた事があった。
いずれにしても、こういった事は自分なりには出来ないし、そんな事をしても全く意味が無い。
大きくは、その自分なりが伝わってきていたものを歪めて来たのだからだ。
そこで必要なのは客観的検証が可能かどうかだけだ。

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