本当の関係性を
月曜日にフランクフルトに発つ。
ForsytheCompanyでの最後のワークショップの為だ。
2005年、初めて招聘されて行ったスタジオでの出来事は、まるで昨日の事のように憶えている。
ダンサーの一人に「自由に動いてごらん、私が関係性を作るから」とまず動いて見せた。
それを見てダンサー達は沈黙していた。
その反応が私には理解できなかったので、続いてダンサー一人一人と、私のいう即興、そしてコンタクトを展開した。
一通り(20名ほど)終わるとForsytheが興奮して「日野、君はリハーサルはいらない、そのまま舞台に出てくれ」と口走ったので、皆から大喝采を浴びた。
その後ダンサー達が、こぞって私と演りたがったのを、安藤洋子さんが笑いながら「はい、はい、順番ね」と皆を制止していた。
その瞬間から全員と打ち解け、尚且つ私の話に耳を傾けてくれる事を実感した。
「どうしたら日野のように動けるのだ?」その質問攻めも続いた。
それから約2週間、最も密度の濃いワークショップと、皆との時間を持てた。
世界のトップレベルのダンサー達を知ることで、また一緒に動いたことで、私の身体感覚は大きく変化した。
もちろん、進化したのだ。
今回作品を作るファブリズが「日野は私達に教えてくれるけど、日野には何か得るものがあるのか」と質問した事がある。
「もちろんだ、皆のようにトップレベルのダンサーと触れ合う事で、私自身の感覚が大幅に鋭くなった。これは皆のおかげだ」というと、大変喜んでくれた。
数年前、ティルマンも自分の作品を作る為に、私を招聘してくれた。
ヤニスもマーツも同様だ。
皆それぞれが活躍し、その核になるのが「感じ合う」という、私が提示した武道の最高の精神状態だというのは、本当に嬉しい事だ。
本当の関係性を舞台で見せる事が出来たら、観客はどれほど驚くか分からない。
皆はそのロマンに賭けている。
そこに価値を見出してくれた彼等の感性は計り知れない。
「日野のように動きたい」それを実現しようとトレーニングを重ねているとメールが届く。
今回ForsytheCompanyの最後の作品も、このワークから多くのヒントを紡ぎ出してくれることを期待している。
明日は稽古があるから、今からパッキングだ。