漫画が教えてくれた未来は、現実になっていた

「夢を実現」この図式を思い起こせば、1950年代の私は毎日漫画を読むことに熱中した。
その中に今は亡き手塚治虫さんの漫画も混じっていた。

劇画を作ったさいとうたかおや一寸怖い絵の辰巳よしひろ、ハードボイルドの佐藤まさあき、ギャグ漫画の草分けになる杉浦茂、関谷ひさし、武内つなよし等々。とにかく漫画三昧だった。
それは一冊5円で借りられる貸本屋があったからだ。

その手塚治虫さんの漫画で、題名など忘れてしまったが、近未来的な物語で、それは間違いなく現代の今日の姿だった。
当時(65年前)は、そんな事を想像すら出来ない子供だった。

バッタバッタと自動的に住居が建ち、人々はそこに暮らす。
もしかしたら空飛ぶ自動車も携帯電話も描かれていたかもしれない。

生気の無い人々は地下鉄や通勤電車に流れ込み、そのまま会社へ行き、自動的な仕事をし、仕事が終われば家に帰る。
そこには人の関係の元になる一家団欒など描かれていなかった。
まるで現在そのものだ。

こういった手塚治虫さんの漫画の未来予想というか、想像というか、それは一体どこから来ているのだろうと何時も思う。
情報という事で言えば、きっと影も形も無かったのではないかと思う。
でも、手塚さんの想像力は、それを浮き彫りにし「漫画」という方法で、教えてくれていたのだ。

物語を生み出す力、絵として現す力の中には、もしかしたら解明出来ない何かがあるのかもしれないと、それこそ夢を持つ。
その夢はあながち間違っているとは思わない。

物語を考え、絵という形で現すという作業の連続が、脳に対して何かしらの刺激を与え、そこからまた物語を紡ぎ出す。
そういう作業が未知の領域を生み出すのかもしれない。

そこから古代に刻まれたという洞窟の壁画を書いた人、その時代を考えるのも面白いと思う。

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