相手を見極める
「日野君、もっと遊んで」と有名なベーシストに言われた事がある。
もちろん、ステージでの演奏中だ
。そのベーシストがボスのピアノトリオにオーディションで入った。
言われたのは、ステージ初日、一曲目の演奏だった。
当時、譜面を勉強しようとフルバンドや9ピース等の、オーケストラを渡り歩いていた。
でも、こじゃれたピアノトリオを演りたくなり、オーディションを受けて入った。
演奏での遊びというのは、おかずやフィールインという呼び方もしている、文字通りの遊びだ。
味付けだ。
遊び過ぎると叱られ、遊ばないと叱られる。
当初はそんな毎日だった。
そこで疑問が頭をもたげた。
「このおっさんは、俺を分かっているのか?」と。
で、賭けに出た。
一番強烈な遊びは、曲のリズムを狂わせてしまうことだ。
これで壊れなかったら大したものだ。
もちろん、壊れた。
ボスが俺にすり寄って来たのだ。
「遊び」の幅は無限だ。
どこからどこまでを遊びとして許容できるかだ。
そこを見極めるのが勝負だ。
ジャズの即興とは、そういった要素も入っているのだ。
単純だ。
例えば、「サマータイム」という曲をすると、いきなり「枯葉」をやるようなものだ。
それを許容できる演奏力や、展開力が勝負なのだ。