映画に学ぶ

イーサン・ホーク主演の「リグレッション」という映画。
そこに流れるテーマが中々興味深かった。

当人にとっての真実は、思い込みが作り出す場合もあるというものだ。
当人だけの真実だから、そのことは共有できない。

まず、当人は被害者だという。
その被害は、堕胎させられ子供を殺されたというものだ。
そして加害者は母親だという。

警察に通報があり捜査が始まるが、肝心の子供の死体が見つからない。
そこで母親は問い詰められていく、その事で病んでいく。
映画はそんな進行だ。

事実ではなく当人にとっての真実、
ここがミソだ。

悪魔崇拝の危機が有るという当人(若い女性)の思い込みに、警察をはじめ心理療法士までも振り回されてしまう。
主演のイーサン・ホークは、その女性の思い込みにどんどん支配されていく姿を好演していた。
イーサンは被害者当人(母親がこの女性を堕胎させ殺したと思い込んでいる)の女性にどんどん引き込まれ、あたかも悪魔がいるように思い込んでいく。
それが度を越した時、悪魔の夢を見るようになる。

心理療法士は、専門家であるがゆえに加害者とされている母親の言動を分析し、何がしかの症状名を付け、母親に心理療法を施す。
つまり、最初からある症状を持った病人だと思い込んでいるのだ。

イーサンは悪夢を毎晩みるようになり、完全に心身共に病んでいく。
最終的には悪夢から覚め、その被害者の妄想、思い込みなのだと気付く。
結局、堕胎させ胎児を殺したという犯罪も無かったということだ、
そしてイーサンの見ていた悪夢の主人公は、毎日警察への通勤時に目にする料理研究家のポスターだったことを発見する。

これは日常とは何か?正常とは何か?を問うている。
つまり、私達は何を指針として、自分の思考を正しいとして日常を過ごしているのか、という問題提起である。

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