ドラムを山北先生に習った
ジャズドラマーの現役時代、ドラムを習った事は一度も無い。
4年前、私が懇意にしてもらっていた、関西ジャズピアノ界の重鎮田中武久さんが亡くなった。
最後の病室に呼ばれたのは、現役のドラマーやミュージシャン達を呼ばずに私だった。
そんな縁から、追悼ライブをすることにした。
しかし、全くドラムの練習をしていないので、どうしようかと思った。
やる気はあるが、手は動かない、という状態だ。
そこでyoutubeの登場だ。
今更だが、本当に便利な世の中になったものだ。
沢山の教則ビデオがあった。殆どの先生は若い。
息子よりも若い先生もいる。誰もが上手だ。
驚くほど上手だ。
誰を見本にしようか、手探りで片っ端から見ていった。
「おっ、これはおもろい」と検索の手が止まったのは、関西弁だ。
関西弁の人達も結構いたが、彼は的を得た指導の仕方をしていた。
そこで早速メールを書いた。
「教えて欲しい」と。
人に何かを習う、ということも、多分片手も無いだろう。
それほど私は切羽詰まっていたのだ。
当たり前だが、習ったからといっても直ぐに叩けるようにはならない。
当日、スタジオで待ち合わせた。
「初めまして武道家の日野晃です」「ドラムの山北弘一です」
で、何を知りたかったかというと、私の奏法が過去の遺物なのか、それとも山北先生などが演奏する方法と同じ種類か、それとも全く通用しない奏法なのかだった。
動画通り、親切で丁寧な指導方法だった。
ドラムも上手だ。
頭が良いからだろう。
構造的に解釈しているから、私にも分かり易く捉えられた。
何よりも、目の前で奏法を見ると、音もリアルだからよく分かる。
色々教えて貰ったが、残念ながらそれらをマスターする時間が無い。
何しろ2週間程で、追悼ライブがあるからだ。
人に教わるというのは、本当に楽しい。
基本的なことを色々指示され、それを見せていく。
その意味で、独学で培ってきた奏法は、決して前世紀の遺物では無かった。
あっという間に時間が来た。
山北先生は、好青年という言葉がピッタリだ。
それからのお付き合いになる。