パン屋さんを閉じる

16年間続けた戸塚にほど近い「パン屋」さん。
今月の29日で店を閉じると言う。

10数年間、クリスマスシーズンにはシュトレーンを送ってくれていた。
一度も店に顔を出していないので、今日こそはと店に顔を出した。
パン屋さん夫婦は、私達の顔を見て目頭を押さえた。
しばらく時間をおき、実は色々あってたたむことにした、と言う話をしてくれた。

この時代に、この場所で16年も続けられたことは、奇跡に等しい。
ただただ、ひたすら美味しいパンを、と頑固なまでにこだわり続けたパンは、誰に紹介しても「美味しい!」と評判だった。

その16年前、開店してからよくパンを送ってくれた。
最初から美味しかったが、一味何か足りなかった。
そんな話を毎回1時間以上は、電話で交わした。
「誰が食べるのか?」つまり、パンとして美味しいと言うのない。
あるのは、お客さんという誰かに向けたものかどうかだ。
そこを突っ込んでいったから、パンは美味しくなっていった。
それこそ、職人さんの味になっていったのだ。

彼等がオープンする前、ある機会があり、懇意にする美味しいパン屋さんを紹介した。
そのパン屋さんも拘りを持ち、パンを焼き続けていたからだ。
その拘りは、ホテルからの依頼も、パンを作るペースが壊れると断っているという姿勢だ。
しかし、そんな姿勢が、その地域に合うかどうかは分からない。
やってみるしかないのだ。
結果、16年で閉じる事になった。

「閉じるのが悔しいです。やり残している事が一杯あるから」というから、「どんな本に書いてあることよりも、誰の話よりも自分が体験した、それがこのお店の役目だったんや。だから、一休みして前に行こう!」と励ました。
近い将来、彼等の笑顔がどこかで見られることを祈るしかない。

今年のシュトレーンは、集大成だという。
成る程、今までとは全く違う、しっとり感があった。
あのお菓子でしっとり感?

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