じっくり取り組むのが近道
先日の本部での稽古には、例の日本一になったレスリング少年が兄弟で来ていた。
夏に日本代表として韓国遠征があり、そこで10㎏も上で、しかも高校生と対戦。
圧倒的な体格差だったが、勝利したそうだ。
その対戦した高校生は、その後の大会で優勝をしたという。
何とも頼もしい話だ。
稽古は、肘の使い方、手の使い方の復習を丁寧に行った。
レスリングの技は技としてあるだろうが、基本的に大事なのは試合で機転が利くかどうか、自分の腕や身体から力を出せるのか否かだ。
だから、一番基本となる、肘の操作や手の使い方を稽古する。
それは、武道の稽古でも同じだ。
手の使い方は、具体的に相手と身体が触れる部位、接点になるのは手が多いからだ。
もちろん、身体全体にその感覚は必要だが、それは時間がかかる。
だから、少年にとっては即戦力になり、尚且つ基本である肘や膝、そして連動を稽古するのだ。
少年の弟は小学6年生だ。
彼もレスリングをしており、兄弟そろって強い。
弟は、身体能力が高く運動センスもよい。
俗にいう呑み込みが早いというやつだ。
肘を抜く稽古を見せてもらった。
しかし、速くしようとするから身体に力みが入っている。
もちろん、私が目に見えないくらい早く動かすので、「そうしよう」とするからだ。
これは、どんな稽古も同じで、完全な間違いだ。
「速くなる」ように稽古をするのであって速くしてはいけないのだ。
速くなる身体になった時、自動的に速くなっているのだ。
私自身は、ゆっくりゆっくり稽古をしているだけで、たまに速くなるかな、と思ってやってみるくらいだ。
この辺りが、見たものに対しての取り組み方のむつかしさだ。
もちろん、それはダンスも同じだ。
大阪のワークショップに、福岡からダンサーが来ていた。
彼女は、福岡ワークショップを始めた当初から受講してくれている。
身体に線を作り、そこを辿るという、日野理論を使った身体操作からダンスへの過程をアドバイスした。
「そうだったのですか?」と大きな目を丸くして驚いていた。
しかし、私としては、理解しているものだと思って、どんどん前に進んでいっていたが、そうではなかったのだ。
逆に言えば、理解してはいるが実際化する訓練が足りていなかったのだ。
実際化する訓練は相当積まなければいけない。
どんな場合にも使える、ということにならなければいけないからだ。
だから、訓練の最中に何度も壁にぶつかる。
そこが一番大事なところなのだ。
壁にぶつかるというのは、何かしらの新しい発見であったり、新たな欲求の証だからだ。
レスリング少年も、肘の訓練で角度が少しずれていた。
そこを修正するには時間がかかる。
しかし、それは少年が「そうか」と気付いた時に始まるものだ。
理解や納得ではなく、こころに響いた時にだけ人は動くのだ。
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