一足飛びの自分は

「自己実現」なる言葉が流行った時がある。
その時「もう、みんなは自己実現されている」とよく話した。
それは昨日に思った自分が今日の自分であり、10年前に夢見た自分が現在の自分だからだ。
その今日の自分、10年前に夢見た現在の自分が嫌なら、昨日の行動、あるいは10年間の軌跡を反省的に捉え、行動を変える、あるいは夢の見方を変えることで、明日の自分や10年後の自分は変わる。
そんな話をした。
しかし、ここをよくよく観察していると、将来と自分との間に深い溝が有ることが分かる。
そこで「どうして人は一足飛びに夢に行こうと思うのか」と言う。
それは、教室でもワークショップでも、受講者を見ているとよく見る事だ。
常に取り組んでいることが一足飛びなのだ。
単純化して言うと、身体の動きがあるとする。
それが出来ないとしよう。
その時に、他の受講者達に「どうすれば出来るか」をアドバイスさせる。
そのアドバイスが、出来ていないことを出来るようにする為のもの、例えば、足が間違っている、肘が間違っている、というものではなく、「身体の意識が〜」「意識をするところ〜」となるのだ。
これは、ダンサー達のワークでも共通している。
そういった言葉が出ると「じゃあ、そのアドバイスをやってみせて」と言う。
すると出来ないのだ。
「えっ、嘘を言っているの?」と思わず聞く。
「一体それは何だ?」
人は何を見て、何を言っているのか?
そんなアドバイスを真に受ける人も、出来もしないことなのに、どうして「ハイ」と頷くのか。
それが私の言う一足飛びだということだ。
だから、本当には夢は実現しないし、する筈もないのだ。
そんな自分を自己実現させているだけだ。
一つ一つ地道に積み重ねる。
技術はそこからしか生まれる事はないのだ。

Follow me!