かっこいいパリジェンヌ
何時もの体育館より少し狭めの会場だった。
身長2mのギタリストが来ていた。
胸骨操作の体操から始め、定番の肘との連関だ。
その2mのギタリストが、自分にかけてみてくれというので、もちろん掛けた。
全員注目するなか、2mの巨漢は、床に倒れ込んだ。
初めて受講する人達は、目を白黒させ、「これはCGか?」と大喜びだった。
ついでに、2人を同時に床に捻じ伏せたり、最後だから色々とサービスをした。
若い連中も大喜びで、一生懸命に取り組んでいた。
「出来ないのは、自分の身体を知らないだけで、知っていけば出来る。最大の敵は、自分の身体を知っていると思い込んでいる頭と、相手を倒したいと思う気持ちだよ」と説明。
常連のルノさんや、昨年から受講しているピエロを職業としている男性が、縦系の連動を成功させていた。
大拍手だ。
そう、出来る事なのだ。
ルノさんだって決して若くは無い。
にも拘らず出来た。
誰にでもできる、ただどれだけ練習をしたのか、それだけが結果を出していく。
当然の事だ。
そんな盛り上がりの中、ワークショップは終わった。
ここからが、パリならではを体験した。
終了後、レオさんが一つ星の日本料理屋へ、食事を招待してくれた。
「フランスだからこんなものでもいけるんか」という味だったので、3人で「これは無いやろ」とボロクソに話していた。
そこに少し大きな声が飛び込んできた。
「今日は記念すべき日だから、パリで美味しい日本食ということでこの店に来た。しばらく我慢して食べたけど、このデザートはなんだ?冗談か本気かどちらなんだ」
「本気です」
「分かったでは、全部下げてくれ」
パリジェンヌの声が店内に響いていた。
その通りだ。
「お前舐めてんのか」と言いたくなる値段だ。
このハッキリと言う姿勢に拍手だ。
これは、別段パリに限ったことではない。
日本でもいくらでもある。
特に東京には多い。
二度と行かなければ良いだけ、という考え方だから、別段事を荒立てないが、このパリジェンヌのように一言言える方が良い。
でないと調子に乗るからだ。
まあ、日本ではクレーマーという呼び方をされる可能性が無きにしも非ずだから、一寸難しいかもしれないが。
いずれにしても、パリは終わった。
最後の最後は、このパリジェンヌかと思っていたら、何と火事と遭遇。駐車場に止めている車が燃えているのだ。
消防車がサイレンを鳴らして走って来た。
やばいでこれは、爆発するから。
何とも強烈なオチだった。