猫の目のように

目まぐるしいとはこのことだろう。
明日は早朝5時に家を出て、成田に向かう。
今からパッキングだ。
4週間は初の長旅だから、服などのローテーションが分からない。
その上冬と来ているし、おまけに最後はジュネーブだ。
前にジュネーブに行ったのは何時だったか。
寒かった記憶だけ有る。
夜列車でジュネーブに着いた時、マーツのお母さんが迎えに来てくれていた。
マーツとそっくりのハキハキとしたお母さんだ。
と言っても私よりも年は下だ。
お母さんの家に泊めてもらったのはいいが、何しろこちらは言葉が出来ない。
そんな事を感じさせない気遣いが、本当に嬉しかった。
毎日のワークは、マーツを除いて初めて私のワークを受けるから、相当苦労をした。
というのは、やはり余り厳密な身体ワークを誰もやったことが無いからだ。
色々なワークが世界中にあるが、私のワークはどこにもない。
リモーンテクニックを教える学校の校長、アラン先生が私のワークを見学して、「そんな高度なことをダンサーに求めるのか」と驚いていたくらいだ。
というよりも、技術なのだから当たり前の事なのだが。
その時、ダンスという身体操作を、どのレベルで考えているのかと思った。
そう言えば、ケベックのワークショップの時、表現という話になり、ソニアやアリエラは「表現」を習ったことが無いと言っていた。
「そうやろ、実は観客に対するメソッドはどこにも無いんや」おかしな話だ。
演者側のテクニックは掃いて捨てるほどあるが、観客に対して何をどうプレゼンするのかのメソッドが無いのだ。
私の日本での「表現塾」の話をしたら、大いに驚いていた。
「まず存在する」それが無いのに、演技もダンスも無い。
もっともな話に感心しきりだった。
アムステルダムではクラシックバレエの為の身体操作メソッドを作るプロジェクトだ。
だから、的が絞りこまれているので面白い。
ただ、出来るか出来ないかはある。
まあ、それも言うてはいられない、2週間である程度形を作らなければいけないからだ。
それもまた、集中力を高めてくれる要素でもある。

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