実はぎっくり腰のまま
今日で、ケベックでの初めてのワークショップは終わる。
今、朝8時前。
ホテルのカフェでコーヒーを飲み、高尾さんが来るのを待っている。
昨日、受講者の一人である振付家から質問があった。
ダンサーにしろ、私の専門である武道にしろ、怪我というものが付き物だが、そんな怪我とどう付き合うのか。という質問だ。
色々な答えがあるが、一番分かりやすい答えを話した。
今回のケベックへの旅は、最悪のスタートだった。
それは、成田へ出発の朝、私の不用意な動作からぎっくり腰を再発させてしまったのだ。
「しまった」と思ったが後の祭りだ。
スーツケースを駅まで引きずりながら、何度動けなくなったことか。
成田に着き搭乗手続きをするのに並ぶが、もちろん痛みで立ち往生を繰り返した。
応急処置のテーピングを購入し、トイレで貼り付けた。
そんなことで痛みが取れる筈もない。
そのどうしようもない状態での搭乗。
そこから12時間同じ姿勢だ。
ニューヨークからモントリオールまで2時間だったか3時間だったか。
到着後、バスで4時間。
普通でも疲れるのに、ぎっくり腰でのこの旅はきつい。
ケベックに到着したのは深夜1時だった。
高尾さんと主催者の一人ソニアが出迎えてくれ、ホテルにチェックイン。
そして翌昼からワークショップが始まった。
という経緯があるが、ワークショップを受講している誰も、私の故障に気づいていない。
質問した振付家に「私の腰が故障しているのに気付きましたか」と聞くと、全員が「ええ~~~」だ。
武道系の大きな人を投げ飛ばしたりしているのを見ているからだ。
ぎっくり腰を知っているのは、通訳をしてくれる高尾さんだけだ。
もちろん、到着した時の私に気付いたのではない。
私が話したからだ。
「まず、痛みの核になるところを特定する。そして、その痛みに集中し徹底的に感じる」それが最も基本的な対処法だ。
そこから、一人で緊張の箇所を緩めていく。
それを全て探りだすのだ。
ワークの最中にも一歩も動けなくなった。
でも誰にも気付かれていない。
そこは私の美意識だ。
最悪の時こそカッコをつける。
その事が、状況を改善させるのだ。
ワークの3日目、高尾さんが「緩めましょうか」と言って、専門家らしく坐骨の圧迫や、胆嚢からの影響等々を発見、そして取り除いてくれた。
成る程、この痛みは坐骨神経の圧迫もあり、胆嚢の衰弱も原因だと分かった。
おかげで相当腰が軽くなった。
専門家は素晴らしい。
原因を特定していくことで、それを注意し再発防止に繋げる事ができるからだ。
それにしても高尾さんの技術は凄い。
殆ど普通だ。
「仙骨周辺のストレッチは出来ないでしょうかね」とリクエスト。
それはゆっくりしてから考えることにした。
コーヒーを飲んでいるが、もちろん痛みはある。
このままワークをし、終わったらその足でモントリオールまで車で4時間。
一泊し早朝モントリオールからシカゴ、そして成田へと10数時間の旅だ。
帰国した明くる日アムステルダムに飛び、2週間後ジュネーブだ。
そのジュネーブには、ForsythCompanyにダンサー達や、何でも伝説のダンサーと呼ばれた人も参加するそうだ。
そういった人達は、ForsythCompanyのダンサー達からの口コミで私を知ってくれているのだ。
そんな楽しい事が待っているから、その頃には完治しているだろう。