俳優渡辺謙さん

俳優の渡辺謙さんがブロードウエイでミュージカルに出演、というドキュメンタリーをやっていた。
「もがくことしかないのですよね」というような事を言っていた。
確かに稽古ではもがいていた。
「笑われてもいい、どんどん試していく、そして捨てていくこと」
「キャリアなんて何の役にも立たないのですから」
俳優渡辺謙は、画面のどこを切り取っても俳優渡辺謙だった。
そして含蓄のある言葉で一杯だった。
まるで人生そのものの言葉だ。
もちろん、渡辺さんは俳優という人生だから、人生そのもので不思議はない。
しかし、それらの言葉は舞台での演技の話だ。
画面は6ヶ月の密着取材だ。
6ヶ月後、つまり、稽古に入り本番までの間に頬はコケてしまい、その重圧がすさまじい事を物語っていた。
エンターティメントの厳しさが、有り有りと浮かんでくる。
ジャズをやっていた頃、ラスベガスのホテルにも出演している、日本人ペアのタップダンサーの伴奏をしたことがある。
1週間の公演だったが、その正確なパフォーマンスに驚いた。
音符と共に踊る姿は、16分音符一つ毎回違わないのだ。
その分、こちら伴奏側の責任が重大だった。
それこそプレッシャーがかかって、その緊張感が半端ではなかった。
しかし、舞台が終わった時の充実感も半端ではなかった。
そのペアを始め、一流のエンターティナー達の伴奏をすることは、音楽を見つめる上での無形の学びになったのは言うまでもない。
渡辺謙さんはトニー賞にノミネートされたそうだ。
それは、日本人として嬉しい限りだ。

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