広場の貸本ブース
コーヒーが飲みたくて、商店街を歩いていた。
少し広場になっているところに電話ボックスのようなものが立っていた。
何かと思い近づくとそれは小さな本棚だった。
???
立ち止まっていると、袋を下げたおばさんが近寄り、袋から本を取り出しその棚に入れた。
もしかしたら貸本の無人版?
後で安藤さんにきくと、やはりそうだった。
まさか貸本ブースがあるなんて。
しかも、鎖も鍵もしていない。
治安が良いのか、本など盗まないのか、ボックスを壊さないのか。
う~ん、深い。
しかし、アパートの前に駐車している車のウインドウは割られていたが。
意識の切り替えを感じ取り動く。手を握る速度に合わせて相手を誘導する。
足から動くな、それでは先に相手に分かってしまう。
どんどん関係性の深みに入る為の指示を出す。
ここに来て、既に2人がこぼれ落ちている。
残念だが、こればかりは仕方がない。
最初から溢れるだろうな、と感じていた二人だ。
身体が動くだけでダンサーになり、ある程度認められている人。
それにプライドを持っているダンサーには、私のワークは耐えられないだろう。
自分自身を突きつけられるのだから。
こぼれ落ちない人達は、感覚が益々鋭くなっていく。
それは新たな視点を持ったのと同じである。
その人達のエンジンはどんどん回転するから、休み時間も忘れてしまう。
今日も気がつけば6時を回ってしまっていた。
午前中も気が付けば2時を回っており、遅いランチになってしまった。
それでも、稽古を続けている人もいる。
今日のランチはスパゲッティにした。
うどんのようなスパゲッティに、胃袋は直ぐに満腹指令を発した。
「一体俺は何を食べているのだろう」パスタだ。
どうすれば、こうまずく作れるのか。
昼からの稽古は、その重いお腹を引きずりながらやらなければいけない。
眠気との勝負になる。
「シエスタの稽古をしようか」で「ブラボー」と歓声が上がる。
一つ一つのワークが、すべて作品に繋がるように、その場で応用を考えさせる。
同じアイディアだが、2つの組はそこから異なったアプローチをしていた。
これは面白かった。
明日は、この2つの組を一つにし、流れに乗るというパーツを入れて、短い作品になるようにやってやろう。
6時前には、ある種の作品になっていた。
こういった事が出来るのが、一流のダンサー達だ。
「日野はヨーロッパに住まないのか?」との意見も出る。
カンパニーが解散したら、それぞれがバラバラになる。
新たにカンパニーに入るものもいれば、フリーランスになるものもいる。
皆は、私のワークショップで顔を合わせたいのだ。
嬉しい話である。
明日は土曜日。
残すところ2日しかない。
ということに気付いているから、集中度が増し自動的にワークショップの密度が濃くなる。
今日は中日なので、何か復習したいものは無いかと質問すると「全部」だという。
それも嬉しい答えだ。
全く関係の無い話だが、人は求められる、他人の役に立っているということが、どれほど自分を充実させるかがよく分かる。
今日はスタジオ内の熱気とは真逆の朝から冷たい雨だ。