誇りを持つ女性は
「私はこの仕事に命をかけていますから」
こういった言葉は前近代的な言葉だと、今の人は思うだろう。
いや、思わされているのだが。
同じ言葉を、クラシックバレエの酒井はなさんからも聞いた。
「バレエに命をかけていると。
これは、私が年二回幹部研修を行っている、特養の女性の口から出た言葉だ。
しかも、役員会議の席での話だ。
役員として顔をそろえているのは、それこそカビ臭い男のお年寄りばかりだ。
この女性のアイディアや行動は、施設全体を良い方向に変えていった。
役員の会議で決定されたことではなく、現場で発見した様々なアイディアを実行していっただけの事だ。
そういった実際をレポートし、新たな提案を役員会議で発表し、何の反応も示さない役員に放った言葉である。
彼女は副施設長なので、当然上役の施設長がいる。
男性だ。
彼女と比較すると、どうも決断力も行動力も欠ける。
その理由をじっくり観察して気付いた。
それは、考えなくても良い事を考えるからだ。
考えなくても良い事というのは、大方がその場で実践すれば答えの出る事だ。
だが、それをする前に足踏みしてしまうのだ。
その一歩の足踏みが、自分の決断力を鈍らせてしまうのだが、自分としては思慮深いつもりである。
その事が、理解できないから、副施設長の彼女に何時も詰められている。
大方の組織は、同じようにスピード感がない。
足を踏み出す前に、足踏みをする人が多いからだ。
彼女は自分が生きている事、自分がやっている仕事に誇りを持っている。
だから、仕事が出来るのだ。
現場は足踏みをする時間は無い。
こんな一言を放てる彼女の潔さが、現場を活気あるものにして行くのだ。