基本に戻る
夜ウトウトとしながら、スポーツ選手達の短いドキュメンタリー番組を見ていた。
フィギアスケートの町田樹選手の、今季好調を探るような内容だった。
町田選手は4回転ジャンプの精度の悪さは、一寸したプレッシャーやストレス、アクシデントが原因だと、自己分析し今シーズンに入る前、それを克服するための練習を徹底したそうだ。
それは、フィギアの原点にあたる8の字滑りと、ゼロ回転ジャンプと言われるものだった。
成る程だ。
その練習を徹底したから、4回転ジャンプの成功率が75%と、驚異的に伸びたという。
何でもアメリカ大会の時、競技直前の6分間練習の時、靴に異変が起こった。
靴ひもを止める留め金が壊れたのだ。
もちろん、町田選手は動揺を隠せない。
振り返って「前の僕なら、きっとそれで4回転は失敗していただろうし、演技も良く無かったと思う」と言った。
その公開練習の終了間際、ゼロ回転ジャンプを何度も繰り返した。
結果、高橋選手や小塚選手を抜かしての優勝だった。
町田選手は、自分の欠点を自己分析し、その事に挑戦した。
しかし、それはがむしゃらに演技を繰り返すのではなく、失敗するであろう4回転ジャンプを分析し、そこを修正した。
それは、新しいコーチが着目した点だ。
コーチは、ジャンプに入る前の姿勢が、がむしゃらに跳ぶから歪みがあることに気付いたのだ。
結果、ゼロ回転ジャンプなる練習方法を編み出し、徹底的に4回転に入る姿勢の感じを掴むようにしたのだ。
この町田選手の良い点は、調子を崩してもそれを立て直す技術を持った、ということだ。
基本に戻る。
それを自分で「そうか、それをやってみよう」と見付けた。
だから、基本のフィギアが役に立ったのだ。
もちろん、ゼロ回転ジャンプもそうだ。
調子を崩せば、基本に戻れば良い。
あるいは、調子を上げる為に基本に戻る。
何とも合理的な考え方だ。
自分自身の基本を持つ、それがこういったスポーツ選手にとって、一番必要な能力だ。
もちろん、それぞれトップアスリートはそれらを持っているのだろう。
高橋選手も、村上選手も、浅田真央選手も。
ハンマー投げの室伏選手も、もくもくと自分の見付けた基本を繰り返していた姿と、町田選手の姿が重なった。