捨てる

「駆け出しの頃に、セリフは覚えるものじゃない、一度覚えたせりふは忘れなさいと言われた。今になって思えば、決して簡単なことではないどころか、演技の奥儀ではないかとさえ思う。若手相手に、とんでもないことを教えた先生もいたものだ。」
11月29.30日、埼玉彩の国で行う公演に出演して貰う、関西の俳優平岡さんのブログで書かれていた。
演技の奥義ではないかとさえ思う、との見切りは平岡さんの深さの成せる業だ。
これは武道でも同じだ。
型を覚えると、忘れなさい、と言われる。
この忘れろ、という中には色々な要素が詰まっている。
最も重要なのは、意識的であってはいけないからだ。
また、型に囚われたらいけないからだ。
つまり、主客転倒してしまってはいけないということだ。
何れにしても、人は持ち続けたり、囲い込んだり、独占するのが好きだ。
それがあるから、「捨てろ」と昔から言われるのだろうと思う。
執着してはいけない、居着いてはいけないのだ。
しかし、執着し、居着くからこそ、そうなってはいけない、ということを自らが知ることとなるのだ。
セリフを全部覚え込み、その芝居の何から何まで覚え込む。
それだけでも大変だ。
だから持っておこうと思う。
だから捨てることが出来るのだ。
では何を捨てるのか。

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