一寸一休み
四条河原町上がる、上島珈琲。
モーニングサービスを食べる為に入る。
奥の喫煙ルームは、煙が漂う。
そんな煙を正当化するように、モダンジャズが流れている。
ジャズ喫茶は煙がモクモクが定番だった。
10代の頃、訳も分からず初めて入ったジャズ喫茶。
今はラーメン屋に変わっているが、道頓堀の交番横手にあった5スポット。
煙草や葉巻の匂いが充満し心地よかった。
クリエーションが終わり、外で一服。
「……、ティルマン?」
「ヒノ!」
何とティルマンが、日本観光に来ていたのだ。
その日は京都のいわゆる名所を回ったそうだ。
三十三間堂が良かったそうだ。
ただ、人だらけで驚いたという。
「ガイジン、イッパイ」
そのティルマンも一緒に舞台監督の関さんの家に集合した。
五山の送り火が、関さんのマンションから良く見えるからだ。
毎年、3,40人が集まるという。
缶酎ハイ片手に屋上に上がり、「大」に火が付き大きくなる様に見とれた。
集合した顔ぶれの中に、踊りに行くぜのプロデューサーの佐藤さんの顔もあった。
またまた昔話だ。
白虎社時代、劇団維新派のマッチャンこと松本雄吉、にぶったまげたと言う話。
お決まりの京大西部講堂の話。
そこに私が一丁噛んでいたという話。
安藤さんや島地君、酒井ハナさんなどは、その発想やエネルギーにうらやましがるだけ。
宴も進み深夜12時過ぎ、河原町通りを今出川から河原町四条まで歩いた。
2.30分も歩いた。
ティルマンは、今日は広島の原爆ドームを見に行くといって、9時過ぎに解散した。
クリエーションの途中で、ライリーは疲れが出てダウン。
クリエーションは明日、明後日と休む。来週は本番に向けて、気分を変えて臨む。
クリフォード・ブラウンとマックス・ローチの名コンビの演奏が流れている。
お互いが一生懸命に音に向かっている。
ただ、それ以外には向かっていない。
こちらには向かっていない。
「そうだったのか」
と、昔は何を聴きたかったのか、聞き取りたかったのかが、今分かった。
酒井ハナさんと話す機会があったので、日本を代表するプリマドンナの舞台を聞いてみた。
幕が開いた時、観客の視線やオーケストラの音が自分に集中している事に圧倒され、何度倒れかかったか分からないそうだ。
その体験から、観客から集中されたエネルギーを、全部跳ね返す強さがいることに気付いたという。
それを聞いてなるほどと合点がいった。
酒井さんの輝きの原点は、そこにあったのだ。
また、白鳥の湖で黒鳥になり、最後の36回のターンには、ダンサーの生き様が全部見えるとも言った。
酒井さんは、「人生をダンスに捧げた」という言い方をした。
そう言う言い方が出来る酒井さんの、それこそ生き様は好きだ。
剃刀のようでもあり、無邪気な童女の面ももちあわせている酒井さん。
別れ際手を振ってくれた姿は、まさに童女だった。
9月15.16.17.18.19日東京ワークショップ
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