アウトインアウトは

35年ほど前に、現道場の在る熊野に引っ越した。
今でこそ、トンネルが抜け、橋が架かり片側一車線の整備された国道になっているが、当時は峠を2つ越える山道だった。
バスやトラックが前方から来ると、すれ違えないので少し膨らんだ道までバックしなければならなかった。

この当時、内弟子の若者が、元暴走族ですこぶる運転が上手だった。
だから、山道にも直ぐに慣れかなりのスピードを出しカーブに突っ込んでいった。
私はその走り方が分からなかったので、直線でしかスピードを出せなかった。
そこで、その若者に運転を習う事にした。

習うといっても、机上の理論ではない。
同乗しての運転解説でもない。
彼が運転する車の後ろにロープを結び付け、私の乗る車を引っ張るのだ。
そして、彼がブレーキを踏まない限りブレーキを踏んではいけないルールだ。

彼の車のラインを辿り、ブレーキングやシフトダウンを車の雰囲気から感じ取り真似る。
そんな車の練習だ。

8時を過ぎると、殆ど車は通らない。
だから、午後10時くらいから、その練習は始めるのだ。

この荒っぽい練習は、3,4回もすれば、完全に運転を覚えてしまう効果があった。
そのラインやギアーシフトを覚えてから、二人で近場の温泉まで競争をする。
もちろん、追い越し等出来ないところなのでそれはない。
彼の車にピタッとくっついて運転できるか否かだけだ。

もちろん、私も事故りたくはない。
だから、山道での安全運転とはどういうことかと考えた。
彼のラインを辿ると、見事に安全運転だと理解できた。
だからスピードを出せていたことを理解した。

それは、一言で言うと、相手の車がこちらの車を見つけ易いということだ。
つまり、前方の車がカーブに入る時、いち早くこちらから車が来ている事を見つけられる場所に、こちらの車があるということだ。
お互いに目視し合った時、どちらにハンドルを切るかもその瞬間に判断できる位置なのだ。
いわゆる、アウトインアウトや、アウトアウトイン等の運転技術だ。
この走り方は、現在でも実行しつつラインと速度の関係を検証し続けている。

また、こんな事が、武道での相手との位置関係や、太刀筋を考えるヒントにもなった。
どこにでも教材は転がっているということだ。

東京ワークショップ迄後二日だ。
「東京ワークショップ定員情報」

■ワークショップのお知らせ
 東京11月28,29,30日12月1日
 東京・岡山・沖縄

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