相手よりも少しだけ速ければ

そういえば、10年以上くらい前、大阪道場は若者が多くいた。
一寸やんちゃで元気の良い奴達から、打撃系の人達が多かった。

その若者達と練習をする。
肘を使う、膝を使う。
今ほど厳密ではないが、その辺りを主に稽古した。

そうすると、突きがドンドンスピードを増す。
そうなると、受け側がきちんと身体操作をしないと、まともに入る。
鈍い音や呻き声が始終響いていた。

そんな中でも、特にやんちゃな一人が「先生、早い突きは『速く突くのではなく』相手より少し速ければ良いのですよね」と言ってきた。
その通りだ。
それを私の動きを見ていて気づいたのだ。
私にすれば当たり前の事だから、その気づきを普通に通り越したが、今から思えば大したものだと感心する。

当時22,3歳だったのではないかと思う。
この当時の若者達は、それこそ自主練で精一杯汗を流していた。
腕回し、胴体のねじれ、胸骨操作等々の基礎訓練を、競ってやっていた。
だから、直ぐに柔らかく身体を使えるようになったし、突きにしろ、蹴りにしろ威力やスピードは増した。
「早い突きとは」に気づいた若者は、その後司法試験に挑戦していると言っていた。

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