ここが原点
朝10時30分過ぎ、安藤さんと連れ立ってスタジオへ向かった。
中に入るとファブリズがセッティングをしていた。
シリルがティルマンが顔を見せ、再会を喜び合った。
ヨネも遅れて来た。
一昨年安藤さんと京都でパフォーマンスをしたライリーも。
皆早くワークを始めたくて仕方がない素振りだ。
「それでは、肘からやろう」私のやり方を熟知しているシリル達は、私の見本を見ると直ぐに始める。
途端にスタジオの空気が濃くなる。
この密度がなんとも言えなく楽しい。
嬉しくなる。
この緊張感集中感は、彼らでしか味わえない。
さすがフォーサイスカンパニーだ。
改めて、ここが私の原点だと感じた。
「難しい」ファブリズが音を上げる。
皆、私と組んで体感しようと周りに集まる。
この雰囲気やプレッシャーが私を成長させるのだから、私にとっても有り難い稽古場でありメンバーなのだ。
恐ろしく感性の鋭いシリルは、以前に増して鋭くなっている。
その感性をクリアするのは、並大抵ではない。
だから私の稽古になる。
新しい人達は、何のことやら分からない風で、右往左往する。
古い連中は、我関せずと自分のテーマを決め、どんどん深く集中していく。
安藤さんが新人の係のように、説明をし落ちこぼれないようにする。
あっという間に昼食だ。「難しい」と言ったファブリズの事を安藤さんと二人で「彼も成長したね」と喜ぶ。
外部からのゲストも数人いるが、目が点になっているだけだ。
それは仕方がない。
フォーサイスカンパニーのダンサー達は、蓄積があるから取り組めるが、初めての人は何のことやら分からない筈だ。
私も時差ボケがあるから、頭が回らないので手が廻らない。
明日は丁寧に説明しながらやろう。5時30分ワークが終わった。
「ええ~、もう終わり!」
「明日や明日」
1時間位しかやっていない感じだ。
嘘だろう。
皆が私のワークを求めてくれているのが、言葉ではなく伝わってくる。
人は間違いなく関係できるのだ。
食事を終え帰宅。風呂に入ったら、今日は眠れるだろう。