フォーサイスカンパニーラスト
「今まで人の顔を見ていたけど、こんなにクリアに見えたのは初めてだ。どうも今まで死んでいたような気がする。それでは人生がもったいないと思った」
カンパニーの新しい若いダンサーが言った。
確か24歳くらいだろう。
大ベテランのヨネは
「コネクトした時、苦手だった人、感情的になる人が消えて、ピュアな見え方がする。日野のワークは最高だ」
こんな感性を持つダンサーが集まっているのだから、素晴らしいカンパニーの筈だ。
昨日フォーサイスが
「日野さん、私の最悪な生徒達は成長していますか」と大笑いしながら聞いてきた。
「もちろん、新しいワークでも何も言わなくても取り組めるし、ややこしい説明を必要としないから、成長している証拠ですよ」
というと、嬉しそうに顔をほころばせていた。
三島由紀夫の作品を題材にした作品のリハで、コップ一杯に入った水をこぼさずに運ぶという稽古を思い出し、
「日野さんは何の問題も無く、それをやったから私達が何か間違っていると気付いた」等々。
今日で今年のカンパニーのワークは終わりだ。
皆は昨日遅かったので疲れているにも関わらず、最後のちからを振り絞ってワークに挑戦した。
身体という概念が間違っていた、と新人のダンサー達が、私の動きを見る度に茫然とする。
最後は、例年通り全員が全員に「ありがとうございました」を言い合う。
その表情はほんとに嬉しそうだ。
そして確実に繋がっているのを感じ取っている。
「また直ぐに会えるよね」
と皆言ってくれる。
「それはビリーさん次第だ、だから皆でプッシュしろ」
夜8時からヨネの家で持ちよりパーティだ。
元フランクフルトバレエのトニーや、アマンシオの彼、10人ほど集まった。
ワイワイがガヤガヤと連日の深夜2時だ。
ヨネがイタリア公演でする「NNNN」のリハを見て、美し過ぎて息が出来なかったという。
フォーサイスもジッと見入ってしまって声が出なかったそうだ。
それは、正面向かい合いと身体を感じるだけを、徹底的に練習したからだとヨネ。
今までの作品とはまるで違う作品のような仕上がりになり、作品が成長したとアマンシオ。
ワークがリハーサルと同時進行で行われているから、身体に染込んでいるレベルが良く分かるのだ。
フォーサイスが「日野さん、夏に東京へ行くからまた会おう」と言っていた。
色々な意味でカンパニーは存続の危機に立っている。
フォーサイスが一人でそれに立ち向かっている。
そう言えば、ワークショップを行ったスタジオと同じスペースのスタジオをもう一つ持っていた筈だが、それはもう無い。
明日は帰国の途に就く。
そしてこの熱病状態のまま京都のワークショップに突入する。
4月20日からの京都ワークショップ
「身体と向かい合う3日間」のお知らせ
https://www.hino-budo.com/2012-KYOTOWS.htm