朝9時、そろそろ出発
クルベリバレエ団が入っているビルは、驚くなかれツアー専用のビルなのだ。
つまり、ダンスや芝居など、スウェーデンの文化を輸出する為の基地だ。
少し前から、韓流という言葉と共に、韓国のテレビドラマやポップスグループ等が日本を席巻しているが、それのスウェーデン版の基地だ。
国をあげて文化を輸出するのは、別段珍しい事ではない。
イスラエルでも、前からダンスに力を入れ輸出産業にしようとしている。
ビルには12のスタジオがあり、ホールも二つある。
大きなスタジオは、舞台と同じ寸法になっており、その向かいには、それと同じ大きさのスペースがあり、それは大道具を組み立てたり、様々な舞台装置を作り込む為のものだ。
その周辺には、木工の作業所、溶接の作業場。
衣装、ヘアー。
フォークリフトが走り回り、様々な作業をするスタッフが動き回っている。
とにかくこんな贅沢なスペースを持てるのは王立ならではだ。
今回通訳をしてくれた役者の武田さんは、ブロードウエイやアメリカの商業劇場でも、こんな設備を持った施設を見た事が無い、と驚いていたくらいだ。
外から見れば、至れり尽くせりの設備を持ったバレエ団だ。
しかし、だからといって良い作品、よいダンサーが生まれるとは限らない。
スウェーデンという国自身も、福祉などが充実しており、まず生活するには困らない。
野良犬も野良ネコも全く見かけないのだ。
ホームレスの人もいるが、聞くとインチキだという。
というよりも、そういう職業なのだそうだ。
人は裕福や充実を求め働く。
裕福や充実した国では、人は何にしても、意欲に欠けるように見えて仕方が無い。
むろん、生活ができることが主体であるなら、それでも何の問題もないし最高だ。
ダンスを職業として、生活出来るということは、それを目指している人にとってはうらやましい限りだろう。
しかし、よい舞台を作ろう、作りたい、と思っていた意欲が、時間と共にどんどん薄れていっているのには気付かない。
この辺りの分析は難しいところだ。