体重差が3倍でも

メッツを終わって、クリスチャンやディビット、坂本君芝田君に見送られた。

TGVは、シャルル・ドゴール空港まで、何の面白みもない風景を両窓から見せている。

彼らは、相当苦労して今回の主催を実行したのだろうと察する。
10年の付き合いたいと言えば、長く感じるが、年に数回しか会わないから、それこそ見ず知らずと言っても良いほどの人達だ。
同じ組織の人達でもないし、武道での流派も関りもない。
そんな人達がわざわざ日本から私を呼んだ上に歓待してくれたのだ。

ましてや今回は、ゴールデンウイークから始まっているので、運賃が2倍もかかっている。
にもかかわらず、稽古以外のオプションに温泉やスキー等を計画していた。
本当に大感謝だ。
次は、1週間程のセミナーにしたいと言う。
稽古をして、皆とパーティ、温泉やスキーを楽しんで、と企画を話してくれる。

それこそ、一体何がそうさせるのだろうか、だ。
もちろん、私の武道研究に興味を持ち、取り組んでくれることで、その深さを感じ取り、「もっと、もっと、もっと稽古をしたい」という。
しかし、それだけでリスクを背負って私を呼んでくれるだろうか。
彼らの熱意と情熱には頭が下がる。

クリスチャンは、パリ警察のテロ対策のトップだから要人警護が仕事だ。
118時間勤務が1週間続くという。
重要な仕事だが、大変な仕事だ。
だから、稽古をする時間が無さすぎると嘆いている。

師範代の坂本君も、どんどん実力を付けて行っているのがよく見える。
日本人ではない体格、力の質。何よりも、日野武道の稽古を知らない人との稽古は、実力が本当に問われる。
一切の言い訳なしに、「出来る」を見せなければいけないからだ。
現地の人は、お構いなく試してくる。
つまり、こちらの稽古の条件に合わない場での、こちらの稽古を遂行出来なければ、自分は通用しないということだからだ。
大きな身体が崩れ落ちる時もあれば、四苦八苦している時もあったが、何とか切り抜けていた。
その「何とか」が、力を付けてくれるのだ。
それは誰も教える事の出来ない、「その場」だけの事だからだ。
秀逸だったのは、ミットに正拳突きで、相手を飛ばしていたことだ。
体格差の相手に力まなかったのは、相当の進歩だと言える。

その意味で大したものだったのは、体格は約3倍ではないかと思われる、声楽家のユキミさんが、寝転んだ状態でディビットを跳ね返したのだ。
それには全員が拍手喝采だった。
身体をちゃんと使えば出来るという、日野理論の生きた証明だ。

日野晃’古希’ドラムソロコンサート
6月1日 新宿ルミネゼロ

 
 

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