決意が自分の方向を決める

ブラインド・サッカーのリカルド・マウベス選手。
8歳の頃から全盲になった。
ブラジルのエースストライカーだ。
17歳の時に抜擢され、オリンピックで金メダルを2回とっている。
そのリカルド選手が来日した。
何でも、彼の能力を解明したいという申し出から実現したものだそうだ。
来日し、まず初めに言ったのは「動物園に行き、珍しい動物を見たい」という。
「えっ、全盲じゃなかったの?」無条件で、反射的に思った。
この固定概念の硬さに我ながら壁々する。
もう20年以上前になるだろうか。
カナダからのツアー客で自転車で紀伊半島を巡るという企画があり、その中継点に道場を使ってもらっていたことがある。
何度目かの時、全盲の人も参加していた。
ツアーの人達が、道場を気に入り写真を撮ったり2階に上がったりした。
全盲の人も「2階に上がってもよいか」と聞くので「もちろん」と答えながら「何が見えるのだろう」と不思議に思ったことを思い出した。
その全盲の人は、一人の晴眼者にリードされながら階段を上がり、空気の感じ、風の感じ、匂い他、色々と感じ取っていた。
そして「素晴らしい道場ですね」と喜んでくれた。
このリカルド選手は、試合でのコートにおいて、10以上の音源を頼りに、立体的にイメージし動いているという。
即座に音源を解析し、自分の場所や環境の構造を把握するという。
動物園に着きゴリラの檻の前に来た。「今、何をしているの?」と同行したフェアンセに聞く。
彼女は逐一説明をする。「仰向けで寝転んでいるの?」その質問は、自分の持つイメージを完成させていくように感じた。
次にパンダの檻に行った。同じように「今何をしているの?」と聞く。
パンダは笹を食べていた。
「ああ、食べている音が聞こえてくるよ」と、先ほどの10以上の音源を頼りに、ということだ。
しかし、人ごみの中、しかもガラスの部屋の中のパンダが食べているのだ。
この解析能力が、人並み外れたサッカー選手の証でもある。
8歳で全盲になったが、サッカー選手になる夢は諦めなかった。
しかし、それを実際化していくのは大変だったという。
その頃通った学校は、いわゆる健常者と混じり合った学校で、級友にも恵まれ勇気が育まれたそうだ。
サッカーのおかげで「何にでも挑戦する」と決意した。
だから、サッカーもしたいから、絶対にやると決めた。
そんな自分の中のモチベーションが、今の自分を作ったそうだ。
そうだろうと思う。
モチベーションは自分の中に無ければいけない。
最後に「自分の中にあるモチベーションは何かを知ることが大事だ」と括っていた。
つまり、自分の外に何かあるのではなく、何時も自分の中にしか何もないのだ。

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