パリは残すところ1日になった。
早朝電話の呼び出し音がなった。目覚ましタイマーの音かとも思ったが電話だった。急いで電話を取り名前を見ると「日野一輝」だ。
「なんや今頃」と思いながらも、持病の膝がぶり返したのかとも思い、元気な声で「もしもし」と電話に出た。
「お父さん、今どこ?日本と違うの?」「今はパリや」という事で、パリ時間午前4時に目がパッチリと覚めてしまった。
息子はオーストラリア・アデレードで、和太鼓のパフォーマンスをしており現地で5つ星を取ったそうだが、私は眠たい。
先日は、パリ警察でテロ対策の偉いさんになっているクリスチャンの家に御呼ばれをした。
パリ郊外で、私の道場ではないが、相当広い邸宅だった。
自分で手を入れているので、住める部屋は少ない。
これも私の道場同様だ。
彼が初めて私のワークショップを受講してくれた時の事を、しみじみと話してくれた。
空手歴30数年で、身体能力も気持ちも最強で自信を持っていたそうだ。
もちろん、そうだろうと思う。
でないとそんな職業を選ばない筈だからだ。
初めて私の動きや受け攻めを体感し、自分のやっている事は100年遅れていると感じたという。
その話を聞いて合点がいった。
私の何を体験していたのか、だから熱心に稽古をするのかが理解できたからだ。
夜は、坂本君や芸術家の芝田君と、ホテルの近所のカフェでビールを飲み、残り2日を惜しんだ。
居合いの稽古には、香取神道流の人も来てくれていた。
とにかく、色んな人が来るのが楽しい。
相手に選んでいる体格の大きな青年は、割合素直な身体をいている。
だから、相手に選んでいるのだ。
坂本君が相手だと、説得力が乏しい時もあるので、体格の良い彼を度々引っ張り出し、私自身もぶっつけ本番を楽しんでいる。
明日からは郊外の道場になる。
何でも当初よりも受講者が増えたので、パリ市内の道場では間に合わなかったのだという。
もちろん、それはありがたいことだ。
今日は、イタリアの講道館の柔道家が受講してくれていた。
私が体重移動で崩すと盛んに「beautiful」を連発してくれた。
明日も受講するそうだ。
彼の何かに役に立てば嬉しい。
車椅子の空手家も受講し、「お腹に筋肉は無いが響きが分かるようになった」と嬉しそうな顔を見せてくれた。
何れにしても役に立っているのは嬉しい限りだ。
明日は最終日。
稽古が終わると直ぐにドゴール空港に行く。
「あっという間のパリ」だった。
まだ夜眠らなければならないが。

