2015Valencia WorkShop

フランクフルトで乗り継ぎ、バレンシアへ。
乗り継ぎは約4時間だったが、JALが着く第2ターミナルから、乗り継ぎのルフトハンザの第1ターミナルまでが、トラムに乗り相当遠かったので、ある意味では良かったかもしれない。
しかし、海外の飛行場は何時も工事をしているのには驚くと共にげんなりする。
何時完成するんや?と、他人事ながら心配する。

バレンシアには、レオさんのお弟子さんが迎えに来てくれていた。
何しろ、深夜11時30分到着でバッグを受け取り外に出るまで30分はかかっているから、12時を回っている。
だから、迎えの人と出会えなければ、空港内で1泊のところだった。
チケットをとる都合で、この便しか選べなかったから、帰りも乗り継ぎが大変だ。
何と10時間もあるのだ。
バレンシアからフランクフルトの便が、ずっと満席で、他の航空会社も満員だと言っていた。
スペインの景気が上向いている、ということなのだろうか。

明けて今日は、同じくレオさんのお弟子さんだが、別の人がホテルに迎えに来てくれ、その人の家で次のホテルのチェックインまでの時間を潰すことになっていた。
バレンシアから車で約30分。
もちろん、高速道路だが市街地からは近い。
畑を通り越すと、ゲートがある住宅街に入った。
セキュリティに気を使っている地域だ。
割合に大きな家が並んでいるので、お金持ちの地域なのかな、という感じがする。
ガレージが自動で開き、中に入るとプールも適度な広さの庭がある。
奥さんともうすぐ4歳の男の子が出迎えてくれた。
家は2階建てで、リビングもキッチンも広い。2階には、「何でこんなものがあるんや」とスロットマシーンが2台に、ビリヤードの台が一つ。
快適な家だ。何でも数ヶ月前に購入したそうだ。その名残がゲーム機やビリヤードの台だそうだ。
そこで過ごした数時間は、ほんとにゆったりとした時間が流れ、それこそ癒された。
庭にある食事用テーブルセットに座り、イベリコ豚の生ハムとクラッカー、庭に咲く桃やリンゴをほうばった。
昼食にはパエリア。
バレンシアの乾いた風が肌に優しい。
子供とお母さんがプールで遊ぶ声や鳥のさえずり。
喧騒は全くない。
自然と目頭が重くなって、熟睡したようだ。

 

1週間のワークショップのためのアパートメントは、会場のすぐ近くに取ってくれていた。
鍵が開きにくくて困ったが、食用オイルを鍵にかけたら快適になった。部屋はゆったりと広い。
1週間滞在となると、ちょっと長いので広い目の部屋がありがたい。
水や食料を近くのスーパーに買いに外に出ると、目の前にファリドやルノーさんにアジズさん、芝田君が何やら立ち話をしていた。
もちろん、ワークショップに参加するために来ているのだから、ここにいても不思議はない。
しかし、偶然街角で出会った。
では再会を祝して乾杯をしに行こうとなった。
クリスチャンも合流し、完全にパリ状態だ。

ミニワークショップ状態になったので、感覚を辿るのと動きを同じスピードで、という難しい稽古を教えた。
明日はデビットも来る。
いつものパリには少しメンバーが足りないが、中身の濃いワークショップにしていこう。

 

昨日の続きのような初日だ。
少し人数が寂しいかな、と思っていたら、案の定申し込んでいた人が来ていなかった。
マーツも急用ができて不参加。
こじんまりと中身の濃い稽古になる。

腕振りからの体重移動、その変化・応用。
これをじっくりやると、相当難しい。
運動をしても相手は動かない。
相手が動くのは、こちらの全体が動いているからだ。
ここにあるトリックは、運動をしている限り、その運動に意識が向いており、前に立つ人の前には動いていないのだ。
もちろん、相手を押そうとか、倒そうという意識が働いても同じだ。
突っ込むとワークが停滞するので、個人の稽古に任せ次に進む。

続いて、突きを使った「肘の使い方」のバリエーションを沢山した。
沖縄空手の先生もおり、よく見ると殆どが打撃系だ。
とは言っても「肘」を使えるかどうかは全く別物だ。
それは別として、打撃系の人はやはり打撃が好きだ。
だから、より熱を帯びた稽古になる。

 

取り組み方を見ていると、やはりクリスチャンが一番丁寧に稽古をしている。
細かいところや、不明な事は必ず質問をするし、自分が理解した事を話し、その正誤も確かめる。
さすがパリ警察の教官であり教授である。
ファリドは考えすぎるから、身体が追い付かない。
しかし、みんな熱心に取り組んでくれていた。

見学の人が気になっていたが、終わると紹介された。
股関節が悪くて、リハビリの仕方を教えて欲しいらしい。
「どうして?」何か分からないが、噂が広がっているようだ。
明日の朝、また来るという。
やはり稽古が続くと暑くてたまらなくなる。
換気扇と扇風機が2台あるだけの、体育館のようなものだからたまったものではない。
夕方は6時からだ。それまで少し寝よう。

昨晩は、2年前に行ったタパスで3つ星を持っているレストランで食事だった。
8人でワイン3本2時間は、こちらでは普通なのだろう。
タパスは全部美味しいが、それ以上にパンが美味しかった。
パン好きにはたまらない味だ。カリカリのくせにねばりが有り、小麦の味が最高だ。
たらふく食べて飲んで、一人27ユーロは安い。

 

稽古は腕に連れられて身体が動く、つまり、手が先に動き体重が移動することだ。
手を先に、といくら注意しても大方は、どうすればその事を自分が実感、あるいは、体感できるか、という考えにはいかない。
大方は、「わかりました」となり、手が先に行っているのか、体重とほぼ同じで動いているのか、体重の方が先に動いているのかを分からずに、
「出来ない」と言いながら時間を消化させる。
「どうすれば」という疑問を持つ人と持たない人、ここにどんな差があるのかは分からないが、自分が何をしているのかを分からなくて「何か」をやっているだけだ。
しかし、逆に考えると、そんな曖昧なことで武道の「技」と言っているのだから、そして段位があることに、それこそ疑問を持つ。
一体何が上位なのだろうか。
外国では、そんな話を直球で投げる。
熱心な人たちは、そのことを理解しているからたとえば、「今まで自分が頑張っていた30数年は何だったのか」と大きくため息をつく。
同時に、慎重に取り組んでくれる。
もちろん、それが自分の為だからである。

身体を動かす時、どこをどう、というを明確にしなければ、何を練習しているのか迷子状態だ。
今日は、朝からそんな話をしよう。
と思ったが、会場へ行くと隣では、スペインの警官のセミナー行われており、結構にぎやかしい。
だから、感覚の線を作ることに専念した。

始まってすぐに、昨日の股関節悪い人が来た。
詳しく聞くと、骨盤(だと思う)が悪く(どう悪いのはわからない)て、他の部位のセルを移植しそれで治療をするようだ。
本来なら、人工的な関節を手術をしてそこを補強するのだが、それが嫌でセルの移植をしたようだ。
当然、時間がかかる。
二、三歩歩いてもらい、即座に胸骨操作を指導し、再び歩いてもらう。
すると、その人の顔色が変わった。
もう少し歩いてもらい、数か所を指先で感じ取る。
もう一度歩いて貰ったら、その人は涙目になっていた。
補助器具なしに歩けたこと。
将来は治るであろうことを感じ取ったからだ。
「ありがとう、人生が変わりました」と喜んでくれた。
それを見ていたレオさんや、受講者の人は目を丸くしていた。
昨日の稽古を見学していて、軽々と歩いている私の姿を見て、もしかしたら治るヒントを教えてもらえるかもしれないと思い、レオさんにお願いしたそうだ。
何でもプロボクサーだったという。
その目で私の稽古をする姿を見ていたのだろう。
でないと、軽々と歩いているとは見えるはずもないからだ。

 

色々な感覚の線作りをし、最後は仰向けに寝たところへ、肘で胸部を押さえ込まれる。
それを逆に身体の感覚でひっくり返すというのをした。
みんな目を点にしながら、迷子になりながらも取り組んでいた。

私が「これをしよう」と提示するのだが、それが不思議だ。
どうして出来るのかが不思議だ。
提示することは、今まで稽古などしたことがないこと、たった今、思い付いた事だからだ。
そんな時に何時も「身体の動きが全て技でなければいけない」と、私自身が目標としている事だ。
確かに、そこに一歩ずつ近づいているのは確かだと感じる。

様々なやり方で「力の方向を変える」をやった。こればかりは、相手は力任せで押してくる。
そのプレッシャーに負けずに、腕の力を緩め肩の回転と肘への連関だけで方向を変える。
みんな目を点にしながらも取り組む。

昨日は、日本人シェフがいる日本料理店へ誘われた。店を見た途端「これは高い」と感じた。
大阪のおっさん根性が直ぐに出る。
案の定一人47ユーロだった。
その割には、……という感じだった。
食事の途中で、数秒完全に落ちた、寝てしまったのだ。
きっと暑さで疲れていたのだろう。
連日の猛暑は、外にいるだけで疲れる。

初めての人もいるから、身体のポイントについて話した。
身体にポイントを付け、そこを「どう動かすか」ということが、がむしゃらな力や表層の力みを無くすことになる。
というような話は通じるのだろうか、と疑うが、一応話しておくことが何かの時の指針になるかもしれないと思うから話す。
それはまた、身体に意思を持たせるということにもなる。
明確な身体のポイントのコントロールは、身体の存在感を作り出す。
そういった深い意味もあるのだ。

今日は、どこにもいかずに部屋で夕ご飯を食べる。
連日、深夜にお腹がいっぱい状態になるのは、絶対にいけないだろう。
モーニングコーヒーがさほど美味しくないことがそれを物語っている。
今日の朝は、久しぶりに胸骨操作をし、胸骨と肘の連関を色々なバリエーションで試した。

どこにも行かずに部屋で夕食は無理だった。
「ビールを一本だけ」が結局10時30分になってしまった。
タパスのイカやポテトを少々食べただけで満腹だ。
やはり年なのか、余り食が進まない。
「もう明日は木曜日だ、時間が経つのが早すぎる」とみんな嘆いていた。

今回はどうして人数が少ないのかの理由は、バカンスのずれらしい。
7月の2週目にならなければ、学校も休みではなく仕事もある人が多い。
その為に、参加できる人は限られているそうだ。
それでは仕方が無い。
来年は2週目なので、人数は相当増えるだろう。
昨日まで参加していた、沖縄松林流の先生も、来年は全部参加できるようにする、と言ってくれていた。
ある程度の年齢とキャリアのある人は、みんな優しい人ばかりだ。
素直に新しい身体の概念に驚き、積極的に取り組んでくれる。

昨日の夜の稽古は、体重移動のバリエーションだけにした。
すると、2時間もすると何とはなしに、3人掛けを全員こなすようになっていた。
これこそ、楽しみながら、ということの成果だ。
それぞれが、どんどんダメ出しをし、それぞれが悩み、それぞれが解決する。
解決した人は、どんどんアドバイスをしていく。
出来るようになっていくのが見えると、私が見本を見せる。
「全く違う」とみんな考え込む。
この繰り返しが、自動的に自分自身を成長させるパターンなのだ。
今日は、そんな話もしてみよう。

 

残すところ、夜の一コマになってしまった。
今日の朝は最後だからと、型の一つを取り出して全身運動を確認するための動きだと説明し、それに取り組んでもらった。

今回バレンシアで初めて受講してくれている人の一人に、イスラムの青年がいる。
彼に限らないが身体を分解し説明を求める人が多くおり、この青年もこの一人だ。
そんな人には「じゃあ、今話たことをやってみせて」ということにしている。
また、そういった分解的な身体構成を説明し、さも身体を理解している如く先生方もいる。
もちろん、その場合も「本当にそうしているのですか?」と呟く。
解剖学者じゃあるまいし、そこを詳しく知って何になるのか?
私にはとんと理解できない。
そのことよりも、自分が目指す動きや成果を出す為に、どうすべきかを考えるべきだ。
その結果、身体の分解だというのなら、それで成長は終わりだ。
自分が考えるべき頭を信じなくてどうするのだろう。

運足で大切な後ろ足の緩み。
それを今日の朝もやったが、ルノさんという空手家は、驚くほど緩んでいた。
そして、当然の事として運足が出来ている。
後ろ足は連られて動く、を体現しているのだ。
「どうしてそれが出来たのか?」と問うと練習の仕方を見せてくれた。
「成程」である。自分の頭で考えるとはそういうことだ。
股関節を緩め、と先ほどのイスラムの青年に言う。
青年は「Yes」と答える。
しかし出来ない。
「出来ないし分からないのに、どうしてYesというのだ」というと、混乱した目をして「分からない」と答える。
出来ないことをいくら続けても出来ない。
出来るようにするには?と考えなければ、そして考えたことを試していかなければできるようにはならないし、稽古とはその側面も持つのだ。
イスラムの青年はいたずらに自分の身体のパーツに手をやり、感覚している風なことをやっている。
その意味でのパーツの意味はない。
それはある種のダンサー達とも酷似している。
どうも、動きや身体を甘く見ているようだ。

 

それはそうとバレンシアのバカンスは今日からだそうだ。
通りにはパレードがあり、花火が鳴っている。
だから、航空券が取れにくかったのだ。

バレンシアでの1週間を何度しているだろう。
もう4年位にはなる筈だ。
つくづくこういった形式のワークショップの楽しさを感じる。
ゆったりと稽古をし、家族もバカンスで一緒に付いてくる。
海外ならではの企画だ。

そう言えば、以前、イタリアの南部、シチリー島が見える、トロペイアという村で大規模なダンスのワークショップがあった。
私を含め、確か7,8人の講師がおり、それぞれ好きなクラスを受けられるというものだ。
もちろん、事前に審査があり、初心者クラスと上級者クラスに分けられた。
内容はともかく、そこでのワークショップも快適だった。
夏はバカンス。
そんな企画を日本で出来ないかな、とついつい考えてしまう。


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●海外での指導

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